学長
弘前大学は、すでにスタートしている第4期中期目標(令和4年度~ 9年度)においても、「女性の採用や上位職登用を推進し、ジェンダーバランスの改善に取り組む。また、ライフイベントやライフステージに適切かつ十分に配慮した支援策を展開し、女性が活躍できる環境を整備する。」とし、中期計画には明確な目標値(女性教員在職比率20%以上、および上位職に占める女性の割合15%以上)を設定しています。令和5年度末の女性の在職比率は21.8%、上位職に占める女性の割合は19.7%と目標をクリアしていますが、継続的な取組が必要であると認識しています。
今年度は、内閣府「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」に引き続き参加させていただくとともに、「男女共同参画トップセミナー」に参加し、すべての人が安心して能力を発揮できる組織に必要なジェンダー・ダイバーシティの視点を踏まえた心理的安全性について理解を深めることができました。また、「女性研究者との懇談会」では若手女性研究者にも参加いただき、両住まい手当、育児負担に対するファミリーサポート、女性研究者への情報提供不足、介護の負担など、生の声をたくさんお聞きすることができました。ライフイベント(結婚、出産、育児、介護など)と研究者としてのキャリア形成に、本学がどのようなサポートができるか、今後も検討してまいります。また、学内の女性教員同士が気軽に情報交換を行えるような機会を設けたいと考えています。
昨年度に採択された「文部科学省科学技術人材育成費補助事業ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特性対応型)」も2年目に入りました。その一環として、弘前大学理工農系博士後期課程女性大学院生フェローシップを創設し、理工農系博士後期課程の女性大学院生に対して、研究奨励費(生活費支援)と研究費を支援しています。この支援が本学への新規採用へとつながるものと期待しています。
大学は知の拠点であり、持続的な成長と価値創造を実現するためには、女性に限らず若手や異文化の人々を積極的に受け入れる必要があります。男女共同参画やダイバーシティは、異なるバックグラウンドや視点からの刺激を通じて組織全体が広い視野を持つことにつながります。これからも多様な人材が自らの才能を最大限に活かせるよう、教育・研究の環境を充実させてまいります。
※令和5年度男女共同参画推進室事業報告書より転載
理事(社会連携担当)
弘前大学では、令和3年度に「第2期弘前大学男女共同参画推進基本計画」の中間見直しを行い、その行動計画に沿って男女共同参画推進のための様々な取組を進めています。中でも、教員の女性限定・優先公募、教員公募におけるダイバーシティレポートの実施、リクルート経費支援(理工学研究科、農学生命科学部対象)などによる女性研究者の応募・採用の促進や、ライフイベントに対する研究支援員の配置(性別・分野不問)や女性研究者をPIとする共同研究支援などの女性研究者の研究力・リーダー力向上等により定着の支援に取り組んでいます。
また、全国に比べて女性研究者の比率が特に低い本学の自然科学系部局(理工学研究科、農学生命科学部)への対応のため、文部科学省科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特性対応型)」を活用して令和4年度に立ち上げた「理工農系女性研究者5割増のためのスマートラボ化・博士後期女性フェローシップ創設」プログラムは2年目を迎え、本年度からはその成果が毎年度問われていくこととなります。
こうした中、本学が重点的に取り組んでいる女性研究者の比率向上については、令和5年10月1日時点で女性教員比率が21.8%と、第4期中期目標の目標値である20%を上回るとともに、前年度同時期と比べ1.5ポイント上昇し、人数も11名増となっています。また、理工学研究科及び農学生命科学部における比率も前年度に比べ向上しており、全学を通じた取組の成果が少しずつ出てきているものと考えます。また、地域の一員として連携していく観点から、弘前市のLGBTQフレンドリー企業の登録申請を行い、本学の取組を広く共有していくこととしました。
こうした取組の一方で、補助事業採択時に設定している女性研究者比率は、第4期中期目標を上回る23%であり、その達成に向けては、引き続き全学一体となって男女共同参画の取組を進め、新たに本学の教員となった女性研究者の方々の定着と新たな採用を図っていく必要があります。
特に令和6年度は文部科学省の補助金交付の最終年度に当たり、その後の3年間は自ら財源を確保し補助事業の目標達成に向け取組を継続していくことが求められます。こうしたことから、来年度は補助金を活用しつつ、その後に向けた事業の展開が継続できるよう、財政面も含めてしっかりと体制づくりを行っていきたいと考えます。
本年度参加したダイバーシティ関連の各種会議、研修では、共に取組を進める全国の大学関係者の方々と交流する機会に恵まれました。特に、本学と同様、大都市圏域から離れた地方大学では、女性研究者の採用や定着に関し、家族と離れた単身での生活や、育児、介護といった際のサポート充実が共通の課題として意見交換されました。高等教育機関等が少ない地方において女性研究者が家族とともに暮らしていける環境を直ちに創出することは非常に難しい課題ですが、本学に働く女性研究者の皆さんから意見や希望を伺いながら、少しでもより良い環境の実現に向け、引き続き取り組んでいきたいと考えていますので、皆様のご理解とご協力をお願いいたします。
※令和5年度男女共同参画推進室事業報告書より転載
室長
日頃より弘前大学における男女共同参画、ダイバーシティ推進にご支援ご協力いただき誠にありがとうございます。
2023年度の男女共同参画推進室は、昨年度採択された科学技術人材育成費補助事業ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(特性対応型)「理工農系女性研究者5割増のためのスマートラボ化・博士後期女性フェローシップ創設」を着実に推進することが主要課題でした。そして年度後半には、この2年間の事業の進捗状況を自己点検評価書にまとめ、2月19日にアドバイザリーボードの第1回委員会を開催し、外部評価していただきました。幸い理工学研究科で2名、農学生命科学部で1名の女性教員増があり、また大学全体の女性研究者比率も2023年9月30日時点で21.5%と2022年5月1日時点から0.9%増加しており、数値目標達成に向けて順調に進捗しているという評価をいただくことができました。一方でスマートラボ化ツールや理工農系フェローシップ制度導入などによる女性研究者の研究効率化や研究力向上などについては、客観的な指標に基づいた効果検証が必要と、今後の事業進捗に有意義なご意見をいただくことができました。スマートラボ化ツールには防音パーティションなど全部局で使用可能な機器も多いですので、積極的にご活用いただくと同時に、事業実施と目標達成へのご協力を引き続きお願いいたします。
これまで構築してきた事業については、改善を意識しながら継続的に実施しています。その中で、ダイバーシティレポートについては提出もれが発生するという運用上の課題を抱えていました。しかし、全学教員人事委員会における学長発言を契機に提出漏れが生じないよう運用改善が図られました。また新たな取り組みとして、ジェンダーやセクシュアリティに関するたまり場であるさんかくラウンジが、関心を有する教員の支援を得て毎月開設されました。一方で、男女共同参画推進基金のあり方、代替教員やリモートワーク対応、教員の定着・確保など、昨年度委員会での議論を進めながら、今年度関係部署との調整があまり進められなかった事項について次年度に向けた課題として残りました。
今後とも、すべての人が働きやすく学びやすい弘前大学の実現に向け、一歩一歩歩んでいきたいと考えています。引き続き皆様方のご協力をよろしくお願いいたします。
※令和5年度男女共同参画推進室事業報告書より転載
令和6年 4月