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HOME > インタビュー > 女性研究者インタビュー > 女性研究者インタビュー 05

女性研究者インタビュー

5人家族で世帯は4つ

―― 先生のご家族についてお聞かせください。 安川 うちは夫と私、男の子が3人の5人家族なのですが、2011年の4月に私が弘前大学に着任してから、4ヶ所に分かれて生活しています。
 私は弘前で、夫は三重県で、それぞれ単身赴任で仕事、大学生の次男は兵庫県の下宿で一人暮らし、そして、自宅は奈良で、そこに大学院生の長男と高校3年の三男が二人で暮らしています。 ―― 皆さんの生活の様子をお聞きしてもいいですか? 安川 子どもたちは、今は不便と自由が半分ずつというところでしょうか。奈良の自宅では、几帳面な兄が自由奔放な弟を厳しく「指導」する毎日だと聞いています。掃除を省くためにお風呂は1年を通してシャワーだけ、洗濯は平日週に2回だそうです。それでも驚いたことに、下宿中の次男も含めて子どもたちは全員自炊をしているんです。末っ子も、長男がバイトで遅くなる日はご飯を作るそうで、なんとか協力してやってくれているようです。
 夫は隣りの県で近いので、毎週末、車で奈良の自宅に帰って、家のことや子どもたちのことをフォローしてくれています。
 私が自宅に戻るのは、たまに出張のついでに少し立ち寄ることはありますが、基本的に「盆と正月」だけです。

「働き続ける」が「研究者」に結びつきました

―― 先生のご職歴について教えてください。 安川 私は、奈良女子大学家政学部(現在の生活環境学部)を卒業後、地元の愛知県に帰り、4年間高校で家庭科の教員をしました。結婚して夫がいる奈良に移り住むことになった時、通勤のことを考えると、山間部が多い奈良県で再び高校教員の採用試験を受けようとは思いませんでした。そこで、短大の非常勤講師として勤めることができたら...と考え、大学の恩師に相談してみたのです。すると「それには修士号が必要」と言われたので、大学院家政学研究科へ進学することに決めました。 ―― そのとき「専業主婦」という選択肢はなかったのですか? 安川 私の両親は高校教師をしていて、ずっと共働きでした。母親が働いているということがまったくイヤではなく、むしろ誇りに思っていたので、結婚しても働き続けることは当たり前だという感覚でしたね。
 これまで、うちの子どもたちが「お母さん、もっと家にいて」と言ったことは一度もなく、言葉には出しませんが、母親がこの仕事をしているのをイヤじゃなさそうなので、それがうちの「答え」かなと思っています。 ―― 「研究者」を志すようになったいきさつを教えてください。 安川 大学院2年を終えて修士号を取得した後、さらに研究生として大学に籍を置きながら非常勤講師の職に就きました。すると、周りの同僚や友人が皆、常勤の職を目指す雰囲気があって、もともと研究が大好きだった私は、自然に研究者を志すようになっていきました。
 非常勤講師として2年間勤めた後、大阪教育大学理科教育講座で正職員の職に就きました。はじめに教務職員として8年、後に助手として2年半勤めました。この10年半の間、職名は違ったものの、やることは全く同じで、授業も担当しましたし、学生の卒論も指導しました。そして、この間に博士号を取得したのです。 ―― お子さん3人はいつご出産されたのですか? 安川 大学院1年生で長男を出産しました。出産の前日は休みましたが、産後1ヶ月弱で戻りました。集中講義があったものですから。
 その3年後、研究生2年目で次男を、大阪教育大学に勤めて3年目に三男を出産し、やはりいずれのときも産後1ヶ月で復帰しました。
 1人目を産んだときに、愛知から、それに合わせて退職した私の母が来て同居を始め、子どもの面倒をみてくれるようになりました。2人目を産んだ後、愛知の実家は残したまま、すでに退職していた父も奈良で一緒に住むようになったのです。
 両親には、授乳のために子どもを私の職場まで車で連れてきてもらったり、幼稚園の送り迎えをしてもらったり、その後子どもが大きくなるまでずっと、本当に世話になりました。13年前と9年前に相次いで他界しましたが、ふたりには「助けてもらった」という言葉しかありません。とても感謝しています。

目からウロコの「母・単身赴任」

―― 大阪教育大学では常勤のお仕事だったのに、そこを辞めてまた非常勤講師をされたのですね。 安川 はい。もともと私は家政学部被服科の出身なので、その分野で職を得ようと、大阪教育大学は退職しました。その後8年間、奈良女子大学をはじめ、帝塚山大学、奈良佐保短期大学...あちこちで被服関係の非常勤講師をしていました。多いときは6つ7つの大学をかけ持ちし、曜日ごとに違う大学へ通ったものです。
 近隣ではなかなか常勤のポストを見つけることができませんでした。かと言って、夫と子ども3人がいる状況の中で、私に「家を離れてまで」という考えはありませんでした。 ―― その先生が現在は弘前大学で単身赴任。どんなきっかけがあったのですか? 安川 三男が高校1年の8月に、ある学会で奈良女子大学の先輩に会ったのです。彼女が単身赴任中だと聞いて目からウロコが落ちました。子どもたちは大きくなったし、親の介護もありません。「私は外へ出られるんだ」と思いました。そこで、子どもたちに「お母さんの単身赴任ってどう?」と聞いたら、まさか実際にそうなると思わなかったのか、軽い調子で「いいよ~」と言ってくれたのです。さっそく地域を限定せずに就職先を探し始めました。決まるまでに100件は応募しなければならないと聞いていたので、簡単にはいかないと覚悟していましたが、偶然弘前大学で求人があり、幸いにも採用していただきました。探し始めて半年。本当に、タイミングがちょうど合った「ご縁」だなあと思っています。 ―― 奈良から、縁もゆかりもない弘前へ。遠いですよね。ご家族も戸惑われたのではありませんか? 安川 自宅から通えないのであれば、例えば兵庫県でも青森県でも同じかなと。弘前でなければいけない理由はありませんでしたが、弘前ではいけないという理由もありませんでした。
 息子たちは皆「おめでとう」と言ってくれました。特に大学生だった長男は、国立大学に准教授で採用してもらえることの意味をよく理解してくれて、喜んでくれました。
 ちなみに、夫には面接が決まった時点で初めて状況を「報告」しました。「相談」したら、いい顔をしないのはわかっていましたから。ただ、夫は来月定年退職なんです。まだしばらくは学生の息子たちを抱える状況が続くので「じゃあこの先は私が働くわ」と言っています。

タテ割りのワーク・ライフ・バランス

―― 先生のご研究について教えてください。 安川 専門分野は「界面化学」です。
 奈良女子大学では、被服の洗浄における「ぬれ」について、大阪教育大学では、「アパタイト」というコロイド粒子について研究をしていました。
 今は、そのふたつの研究を結びつけて、「高機能微粒子を布につけることによる新素材の開発」を目指しています。布に様々な種類、形、大きさのアパタイト粒子を付着させて、例えば抗菌性が増すか、UVカット効果があるか、吸水性が高まるか...など、何か「いいこと」がもたらされるかどうかを調べ、そこには奈良女子大学で行っていた手法も用います。
 やっていることは基礎研究なのですが、いずれ私たちの生活に役立つような成果につながればと思っています。
 また、弘前大学に来てから、被服の教材研究にも取り組み始めました。 ―― 先生のお話を聞いていると、本当に研究がお好きなのだということが伝わってきます。 安川 現在は、とにかく思う存分仕事ができて楽しいです。以前の反動で、家事はできるだけ省力化しています。お弁当も含めて、食べるものは自分で作りますが。
 横軸が時間の流れ、縦軸が時間の量で人生のグラフを書くと、仕事と家庭の両立といえば、普通グラフを横に切って、日々仕事と家庭両方のバランスをとることを指すのではないでしょうか。私の場合は、子育てを両親に任せていた大教大時代や現在は、時間と労力のほとんどを仕事に費してグラフは仕事一色、一方、非常勤時代は子どもの塾や習い事の送迎もやっていたので家庭色が強い...いわば人生のグラフを縦に区切ったワーク・ライフ・バランスと言えるかもしれません。仕事も家庭もとことんやりたかったから、そうなったのだと思います。

これまでも、これからもしなやかに

―― 学生や後進の皆さんに何かメッセージはありますか? 安川 強制はできませんが、ぜひ多くの女性に仕事を続けてほしいと思います。国立大学の学生さんは、税金を使って勉強させてもらったわけですから、つけた力は社会に還元してもらいたいです。
 働くときに、置かれる状況は本当に千差万別で、考え方も人それぞれですから、全ての人に共通するアドバイスというものはないかもしれません。ただ、仕事と生活の両立のために、世の中の環境が整いつつあるからといって「制度がこうだから」と権利だけを振りかざすのはどうかと思います。逆に、個人の考えを人に押し付けることもできないでしょう。一番大切なのは、「お互いさま」と思えたり、世代などを超えて「恩返しの気持ち」を持てたりする人間関係を築くことだと思います。 ―― これからの抱負をお聞かせください。 安川 これまで、あまり先のことを考えずにやってきました。そういう余裕がなかったし、いつ何が起こるかわからないから考えても仕方がない、という思いもありました。これからも、向こうからくる運命に臨機応変に対応して、今のまま、しなやかに生きていきたいです。
(このインタビューは平成25年1月に実施しました。)

  • 弘前大学
  • 弘前大学男女共同参画推進室
  • 女性研究者研究活動支援事業
  • 弘前大学理工学部 理工学部女子会

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